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本番でのアガリ防止術

一生懸命練習を重ねた曲なのに、発表会本番では、極度の緊張のため、ボロボロ・・。 ピアノ弾きにとって、これほど悔いの残ることはありません。
●人はなぜ、緊張するか?
「緊張する」という反応は、もともと、生命に危険が生じたときに、脳から発せられる警戒信号です。
しかし、そこに一つの疑問が生まれます。生命に危険が生じたとき、本来であれば「火事場の馬鹿力」のように、エネルギーを集中放出したほうが、うまく切り抜けられるはずなのに、なぜ、全く反対の反応を示すの?
実はそこには、生き物の本能が隠されています。
「蛇に にらまれたカエル」という言葉があります。大物相手に萎縮してしまった状態の人を、蛇に追われ、動けなくなってしまったカエルに例えた言葉ですが、実は自然界では、「追うもの」の目は、動くものに鋭く反応するようになっているのです。
自然界での「追うもの」は、必死に逃げるものを、後ろから全速力で追いかけて捕まえるわけですから、動くものには目が鋭く反応しますが、動きの止まったものは、見失ってしまう傾向にあります。
ですから、猫に追われたネズミは、逃げ切れないと分かったら、動きを止めることがあります。ネズミに限らず、多くの生き物の外観は、自然の中では保護色ですから、下手に動いて目立つより、じっとしていたほうが、猫の目から逃れられることもあるからです。
自然界で得た知恵、「じっとしていたほうが、生存率は高くなる」は、現代の人間にも当てはまる部分があります。恐怖に直面すると、硬直してしまう。高いところに登ると、足がすくんで前に進めなくなるなど……。 そして、人前での「緊張」で、体が震えるというのも、おそらくここに原因があると考えられます。
自然界で得た知恵によって、ピンチ状態になると、「脳」から
「じっとしていたほうが、生存率は高くなるから、動けなくなれ!」
の指令が出て、本来の正しい命令が筋肉に伝わらなくなります。 この状態で、ピアノに向かったらどうなるか? もうヘロヘロの演奏は確実ですね。
ピアノ演奏の本番は、たとえ失敗したとしても、生命にどうということはありません。しかし、
“もし、衆人の前で、赤恥をかいたら・・”
という煩いがあるときは、本人にとっては、人生最大のピンチとなることも、しばしばです。 つまり、緊張の原因は、“失敗に対する、必要以上の恐れ・・”
失敗したら、もう、この先私は生きていけなーい! という、必要以上の不安が、緊張の原因なのです。
●緊張の原因(失敗に対する必要以上の恐れ)
「失敗してはいけないという意識がある」 「自信のない部分があり、ミスが不安」
この二つには、共通事項があります。 自分の意識が、“周りの人から見た自分の姿”に向いている。
演奏前、他人に映る自分を意識してしまうことで、ミスした場合のマイナス部分がかなり強調され、それに対して、不安と、プレッシャーが増幅されている。
●対処法 (一般的な方法)
・その1
手のひらに「人」を書いて・・。
これは、心理学的に言うと、まず、文字を書くことによって、意識を脇にそらす。 次に、緊張しなくなるという自己暗示が入っています。 しかし、これは、100%信じ込まないと、効果は出ません。 本当にこんなのが効くの? と思ったら、絶対に効きません。
・その2
ギャラリーをカボチャだと思えば緊張しない・・。
これは、ギャラリーの存在を無視することにより、「不安」自体をなくすための、初歩的な方法です。 しかし、心理的には「逃げ」が入っています。
・その3
絶対にミスをしないよう、自信満々でのぞめるようにする。
暗譜は当たり前。その上で、目をつぶっても、弾けるくらい、完璧に仕上げる。 これくらいできれば、心理的にも、余裕をもって弾くことができるでしょう。しかし・・。 もっといい方法はないものか・・?
●さらなる対処法
緊張の原因が、「失敗に対する恐れ」であるということは、本番前の思考回路から「もし失敗したら?」を遮断すればよいのです。では、どのようにすればよいでしょうか?
プラス思考
野球の2アウト満塁の状況で、バッターボックスに向かうとき、一流の選手は、 「ここで3振したら、ファンのブーイングが俺に……逃げたいよ……ドキドキ」 などということはありません。
「よーし、今日のヒーローの座は俺がもらった!」 と、最初から成功のイメージを持ってバッターボックスに向かいます。
そこには「ヒットを打たなければ!」という追い詰められた心境ではなく、「俺はヒットを打つために打席に向かう」というプラス思考が、はたらいています。
失敗したらどうしよう……というのは、失敗する自分をリアルにイメージしてしまいますから、プラス思考によって、「もし失敗したら?」を遮断すればよいのです。 つまり、余計なことをあれこれ考えず、自信を持って、「ヒットを打つために打席に向かう」 という考え方で向かうのです。 自我をなくす・・
頭の中で、“上手く弾かなきゃ”など、あれこれ思い煩うと、かえって悪くなります。 ですから、ミスの心配はせずに冒険心をもって、「たとえミスをしたとしても、そのミスを補って余りある、魅力的な演奏をしよう」と心掛けてみてください。
世界的なピアニストだったホロヴィッツやコルトーでさえ、演奏の録音にミスは見られます。 ミスを怖がった「安全運転」の退屈な演奏より、「魂のこもった」豊かな演奏のほうが、多くのものを聴き手に伝えられるものです。ですから、「何がどれだけ伝わるか?」そこだけを意識するのです。
大事なのは、このような考え方を普段から持つようにすることです。 普段、マイナス思考の人が、本番前だけ「前向きに……」と考えても、少し油断すると「でも失敗したら……」とすぐにいつもの状態に戻ってしまいます。ですから、常に前向きな考え方は、普段の練習時から習慣付けてください。
「今日の練習は、いつもより、うまくいくような気がする」 まずは、ここから始めてみてください。早速、今日の練習からプラス思考を……。
●それでも本番で緊張してしまったら?
準備満タンでのぞんだものの、それでも、緊張というのは突然やってくることがあります。 例えば、ほんの数分前までは平気だったのに、出番が近づいた途端、急に平常心を失ってしまったり……。 そのようなときは、呼吸法によって、素早くリラックス状態を取り戻してください。鼻から3秒吸い、6秒口から吐くという腹式呼吸を繰り返すことで、精神を落ち着けます。
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